音楽技能検定をホームスクールで活かす方法|級の選び方・落とし穴・解約条件まで専門家が解説

音楽技能検定をホームスクールで活かす方法|級の選び方・落とし穴・解約条件まで専門家が解説

通知表がない。内申点もつかない。ホームスクールを選んだご家庭から、私が一番よく受け取る相談がこれです。

「この子の努力を、どうやって形に残せばいいんでしょうか」

学校という物差しから離れると、成長が目に見えなくなる。本人も親御さんも、手応えのないまま1年が過ぎていく。この「証明がない不安」は、想像以上に子どもの自信を削ります。

だから私は、音楽を続けているご家庭には検定の話を必ずします。

今回取り上げる音楽技能検定は、一般社団法人 日本音楽協会が実施している検定試験。10級から1級まで、実技と学科の両輪で音楽の総合力を測ります。

コンクールのような順位はつきません。他人と比べず、決められた基準に届いたかどうかだけを見る絶対評価です。

正直に言います。私はこの検定を「誰にでもおすすめ」とは思っていません。

キャンセル規定はかなり厳しめ。級の認定にも知らないと泣きを見るルールが隠れています。そこを伏せて申し込みを煽る記事にはしたくない。

良いところも、引っかかるところも、全部並べます。そのうえで判断してください。

検証レビュー:目的別ジャンプリンク

最初に、いちばん多い質問に答えておきます。

「うちの子、何級から受ければいいの?」

ここを間違えると、お金も時間も気持ちも消耗します。下の診断で、出発点の目安をつかんでください。

HOMESCHOOL DIAGNOSIS
うちの子はどの級から? スタート級診断
3 年
ブルグミュラー前後
短い曲ならできる
週 1 時間
Q5. 受験する目的に近いのは?

診断はあくまで出発点の目安です。迷ったら一段下から。合格体験が一度あるだけで、次の学習への向き合い方がまるで変わります。背伸びして落ちるより、確実に一段上がるほうが結果的に早いんです。

目次

音楽技能検定とは?主催団体と検定のしくみ

主催は一般社団法人 日本音楽協会。

全日本ピアノコンクール、全日本弦楽コンクール、全日本管楽コンクールを運営している団体です。音楽教育の現場では名前の通った組織で、指導者向けの講座も開いています。

その団体が「コンクールとは別の物差し」として立ち上げたのが、この検定。

順位を競う場は、もう十分にある。足りていないのは「今の自分がどこにいるか」を静かに教えてくれる場だった。そういう問題意識から生まれた検定だと私は受け取っています。

部門は3つ。ピアノ・ヴァイオリン・フルート

スタート時はピアノ部門のみでした。その後にヴァイオリン部門とフルート部門が加わっています。

いちばん受験者が多く、会場も日程も充実しているのはピアノ部門。この記事も、断りがない限りピアノ部門を前提に書いていきます。

ヴァイオリン・フルートを検討中の方は、部門ごとに会場数も規定も違う点にご注意を。公式サイトで必ず該当部門のページを開いてください。

10級から1級まで。裾野がとにかく広い

級の幅は10級から1級。この幅広さが、この検定のいちばん分かりやすい特徴です。

10級は音楽学習1年目程度。1級は難関音大の合格レベルが想定されています。

つまり「ピアノを始めて半年の子」と「音大受験生」が同じ検定の中にいるという設計。ホームスクールのご家庭にとって、これは地味に大きな意味を持ちます。

何年経っても物差しを乗り換えなくていい。10級から積み上げた記録が、そのまま1本の線としてつながっていくからです。

難度 級 挑戦の目安 学科
基礎 10級・9級 習い始め〜小学校低学年ごろ なし
8級・7級 小学校中学年〜中学生ごろ 4科目から2科目を選択
応用 6級・5級 小学校高学年〜高校生ごろ 4科目から2科目を選択
4級 高校生〜大人。自力で音楽を楽しめる段階 4科目から2科目を選択
音高・音大 3級・2級 音高受験〜中堅音大受験レベル 4科目すべて
1級 難関音大受験・プロの実力確認 4科目すべて

年齢の目安は書いてありますが、縛りではありません。

実技・学科ともに、どの級でも自由に受験できます。大人の再挑戦組が4級から入るのも、小学生がいきなり6級を受けるのも自由。

ホームスクールの子は、学年と実力がずれていることがよくあります。この「学年に縛られない」設計は、それだけで相当ありがたい。

実技と学科、二本立ての中身

試験は実技と学科に分かれています。

実技は、公式が用意した課題曲リストから選んで演奏する形式。自由曲ではありません。

学科は楽典・聴音・リズム/視唱・初見視奏の4科目。いわゆるソルフェージュの領域です。

【学科4科目でやること】
  • 楽典/音名・リズム・拍子・音程・音階・和音・演奏記号といった、楽譜を読むためのルール
  • 聴音/流れてきた音を聴き取って、五線に書き起こす
  • リズム/視唱/楽器を使わず、自分の身体だけでリズムを刻み、譜面を歌う
  • 初見視奏/はじめて見る楽譜を短時間で読み取って、止まらずに弾き切る

4〜8級は、この4科目から得意な2科目を選んで受験できます。

1〜3級になると選択制は消えて、4科目すべてが対象。ここで難易度が一気に跳ね上がります。

9級と10級には、そもそも学科の設定がありません。実技だけで完結します。

この「学科がセットになっている」点が、他の演奏系グレードとの決定的な違いです。弾けるけれど楽譜は読めない、という状態を長く放置すると、必ずどこかで頭打ちになる。検定を口実にソルフェージュへ手を伸ばせるのは、指導者としてはかなり助かります。

合格ラインは公表されている

何点取れば受かるのか。ここが明示されているのは、受ける側として安心材料です。

級 実技の目安 学科の目安
1級 80点 60点
2級・3級 75点
4級〜10級 70点

学科は100点満点で60点。ここに合計60点以上なら、いずれかの科目が0点でも合格という規定が付いています。

この一文、読み飛ばさないでください。

聴音が絶望的に苦手な子でも、楽典を詰めれば合格にたどり着ける。苦手が一つあるだけで門前払い、という設計になっていないんです。

凸凹のある子を見てきた立場から言うと、この寛容さは本当に価値があります。

なお合格率は公式には発表されていません。ピアノ指導者が運営する情報サイトでは6割前後という記述も見かけますが、公式の数字ではないので参考程度に。

他の音楽検定にはない、音楽技能検定だけの強み

似た検定はいくつもあります。その中で、この検定を選ぶ理由はどこにあるのか。

私が挙げるのは4つです。

強み①/実技と学科を「別の日」に受けられる

ここがいちばん語られていない長所だと思っています。

実技と学科は、それぞれ単独で、別の日に受験できます。

実技に至っては1曲ごとに受験日を分けることまで可能(3〜10級)。バロック・古典の曲を春に、ロマン・近現代の曲を夏に、という組み方ができます。

一日で全部を背負い込まなくていい。

体調や気分の波が大きいお子さんを見ているご家庭にとって、この分割受験はリスクの分散装置そのものです。

強み②/順位がつかない絶対評価

コンクールは相対評価です。同じ演奏をしても、その日の出場者の顔ぶれで結果が動く。

検定は違います。基準に届いたかどうか。それだけ。

他人と比べられて心をすり減らした経験のある子に、私はコンクールを勧めません。比較のない土俵で、自分の伸びだけを見る。それが必要な時期が確実にあります。

強み③/合格するまで何度でも挑戦できる

不合格になっても、次の回にまた受けられます。回数制限はありません。

これは、失敗の意味を変える仕組みです。

一発勝負だと、落ちた瞬間に「終わり」になる。何度でも受けられるなら、落ちた回は途中経過になる。

ただし受けるたびに検定料はかかります。そこは冷静に。

強み④/合格証・認定証・楯という「形」が残る

実技・学科それぞれの合格時に合格証。級の認定時には認定証(賞状)と楯が発行されます。

紙切れじゃないか、と思われるかもしれません。

でも、家の壁に貼られた賞状を毎日見て育つ子の顔つきを、私は何度も見てきました。ホームスクールの子には、努力の跡が目に見える形で残ることが、想像以上に効きます。

履歴書についても触れておきます。公式は「音楽歴の一つとして履歴書に記載できる検定を目指す」という表現を使っています。

文部科学省の後援認定を視野に入れている、とも書かれています。「後援を受けている」わけではありません。ここは正確に押さえてください。

国家資格のような効力を期待して申し込むと、話が食い違います。あくまで民間検定です。

「履歴書に書ける資格がほしい」という動機だけで受けるなら、私は正直おすすめしません。就職や進学の場面で決定打になる種類の資格ではないからです。価値があるのは、そこへ向かう半年間に何を積み上げたか。級はその副産物だと思ってください。

課題曲リストと試験日程を無料でチェック

音楽技能検定のメリット・デメリットを正直に並べる

良い面だけ書いた記事を信じないでください。私の記事も含めて。

判断材料になるように、両方を同じ熱量で並べます。

✅ 評価できるメリット・向いている人
  • 10級〜1級と幅が広く、何年経っても同じ物差しで成長を追える
  • 学年や年齢の縛りがなく、どの級でも自由に選んで受けられる
  • 実技と学科を別の日に分けられる。実技は1曲ずつ受験することも可能
  • 順位がつかない絶対評価。他の受験者との比較で結果が動かない
  • 合格するまで何度でも挑戦できる。回数制限なし
  • 4〜8級は学科4科目から得意な2科目を選択できる
  • 合計60点以上なら1科目が0点でも合格。苦手を他で補える
  • 審査員の講評が後日届く。点数だけで終わらない
  • 合格証・認定証・楯という目に見える記録が手元に残る
  • 日本音楽協会の正会員なら受験料が割引になる
❌ 注意点・向いていない人
  • 級の認定には実技と学科の両方の合格が必要。しかも両者の合格時期が3年以内という期限つき
  • 申込後の級・課題曲・会場の変更は不可。取り消しには手数料がかかり、締切後は返金なし
  • 日程変更という制度がない。一度キャンセルして申し込み直すしかない
  • 学科の準会場は4〜8級の楽典・聴音のみ。1〜3級や視唱・リズム・初見視奏は本会場限定
  • 会場と日程が固定。地方在住だと交通費や宿泊費が上乗せされる
  • 同じ日・同じ会場で複数の級を受けることはできない
  • 1〜3級は暗譜が必須。譜読みの支えが使えなくなる
  • 課題曲リストからの選曲制。好きな曲で受けることはできない
  • 事前登録と違う曲を弾く、曲数を間違える、遅刻する。いずれも失格または減点の対象
  • 会場内は写真・動画の撮影が全面禁止。記念撮影もできない
  • 保護者控室の用意なし。中学生以下の同伴者は1名まで
  • 講評の内容についての問い合わせには応じてもらえない

並べてみると、けっこう硬い運営だと分かります。

ゆるい検定を想像していた方は、ここで一度立ち止まってください。

特に「3年以内ルール」と「申込後は変更できない」の2点。この2つを知らずに申し込んで後悔する人が、毎年一定数いるはずです。

逆に言えば、そこさえ設計できていれば怖くありません。

こんなご家庭には、私は迷わず勧めます

学校に通っていないけれど、音楽だけは続いている。そんな子がいるご家庭。

家庭学習が自由すぎて、締め切りのない毎日に少し疲れている親御さん。

コンクールで順位をつけられて、心が折れた経験のある子。

弾けるけれど楽譜が読めず、そろそろ限界を感じている中級者。

大人になってから再開して、独学の現在地を測りたい方。

逆に、いったん見送ったほうがいい場合

今この瞬間、お子さんが音楽そのものを嫌がっている。これはもう、検定どころではありません。

試験日に確実に会場へ行ける見通しが立たない。返金の条件が厳しいので、リスクが大きくなります。

就職や進学で直接的に有利になる資格を探している。それなら別の選択肢を検討してください。

好きな曲を自由に弾いて評価されたい。課題曲制なので、この希望とは噛み合いません。

ひとつだけ約束してほしいことがあります。申し込む前に、必ずお子さん本人の口から「受けてみたい」と聞いてください。親御さんが先に決めてしまうと、合格しても本人の自信にならないんです。ここは経験上、例外がありません。

専門家が教える|音楽技能検定の効果を最大化する5つのルール

専門家が教える|音楽技能検定の効果を最大化する5つのルール

申し込んで終わり、では意味がありません。

この検定は「受け方」を設計できるかどうかで、得られるものが何倍も変わります。

ホームスクールのご家庭を見てきた中で、これは効いたという方法だけを5つ挙げます。

ルール①/実技を先、学科を後。順番を固定する

初めて受けるなら、実技から入ってください。

理由は単純で、実技のほうが「準備している実感」を持ちやすいからです。

毎日ピアノの前に座る。課題曲が少しずつ形になる。進んでいる手応えが、そのまま本人のエネルギーになります。

学科は逆です。楽典のワークを解いても、聴音を書き取っても、伸びが見えにくい。

いきなり学科から入って、手応えのないまま数ヶ月を過ごすと、たいてい途中で止まります。

実技で一度合格証を手にする。その勢いのまま学科へ向かう。この順番が、いちばん脱落しません。

ルール②/実技は「1曲ずつ」に分割して申し込む

3〜10級は、課題曲を1曲ごとに日を分けて受験できます。

この仕組みを使わない手はありません。

2曲を同時に仕上げようとすると、練習時間が単純に倍必要になります。しかも本番当日に体調を崩せば、2曲分の努力が一度に流れる。

【分割受験の年間モデル:8級を1年かけて取る場合】
  • 前期/実技「バロック・古典」から1曲を受験
  • 前期の学科日/楽典・聴音の2科目を受験(準会場でも可)
  • 後期/実技「ロマン・近現代」から1曲を受験
  • 結果/実技2曲+学科の合格がそろい、8級の認定へ

一度に全部を背負わせない。これがホームスクールの検定活用では特に大事です。

ルール③/学科の「2科目選択」は最初に決め打ちする

4〜8級の学科は、4科目から2科目を選べます。

ここで欲張って4科目すべてを勉強させるご家庭がありますが、私は止めます。

合格に必要なのは2科目。残り2科目に割いた時間は、少なくとも今回の合否には1点も乗りません。

おすすめは「楽典+聴音」の組み合わせです。

理由は3つ。市販の教材がいちばん充実していること。自宅で完結する対策がしやすいこと。そして学科の準会場でも受験できるのが、この2科目だけだということ。

視唱やリズムは、声を出して人前で歌う科目です。ここに苦手意識のある子は少なくありません。無理に選ぶ必要はまったくない。

ルール④/3年以内ルールから逆算して年間計画を引く

級の認定を受けるには、実技と学科の両方に合格する必要があります。

そして、その合格時期が3年以内であることという条件がついています。

実技だけ取って満足し、学科を放置したまま3年が過ぎる。すると実技の合格は級の認定に使えなくなります。

これが、この検定でいちばん多い「もったいない失敗」だと私は見ています。

対策は簡単です。実技に申し込んだその日に、学科をいつ受けるかをカレンダーに書き込む。それだけ。

3年もあると思わないでください。ホームスクールの3年は、本当にあっという間です。

ルール⑤/講評は「次の課題リスト」として使い倒す

審査員の講評が、後日郵送で届きます。

ここを読んで終わりにするのは、あまりにもったいない。

指摘されたポイントを箇条書きに書き出して、次の3ヶ月の練習テーマにしてください。第三者から届いた具体的な課題というのは、家庭学習では手に入りにくい貴重な資源です。

親が同じことを言っても、子どもには届かない。知らない専門家が紙に書いてくれた一言は、なぜか届く。

ただし講評の内容について協会へ問い合わせることはできません。届いた文面がすべてです。

この5つの中で、どれか1つだけ選ぶならルール④です。3年以内ルールを知っているかどうかだけで、同じお金を払っても手元に残るものが変わります。逆に言えば、ここさえ設計できていれば、あとは多少つまずいても取り返せます。

料金プランの深掘り|検定料の構造と、見落としがちな追加コスト

お金の話をします。ここを曖昧にする記事は信用しないでください。

検定料は「級ごと」かつ「実技・学科ごと」に設定されている

まず構造を押さえてください。

この検定の料金は一律ではありません。級が上がるほど高くなり、さらに実技と学科でそれぞれ料金が発生します。

つまり「1つの級を認定まで取る」には、実技分と学科分の両方が必要になるということ。

実技を1曲ずつ分割して受ける場合も、受験回数分の費用がかかります。分割は精神的には楽ですが、金額面で得になるわけではない点は正直にお伝えしておきます。

具体的な金額は改定される可能性があるため、この記事では数字を断定しません。公式サイトの料金表が唯一の正解です。

【予算を組むときに必ず確認する4項目】
  • 受けたい級の実技の検定料
  • 同じ級の学科の検定料(9級・10級は不要)
  • 実技を分割する場合の受験回数
  • 正会員かどうかによる割引後の金額

正会員割引は10%、W正会員なら15%

日本音楽協会には有料の会員制度があります。

正会員になると検定料が10%割引。生徒側と指導者側の両方が正会員である「W正会員」の場合は15%割引になります。

会員種別は3つ。個人の正会員、指導者の正会員、そしてその両方がそろったW正会員です。

ここで注意点をひとつ。

エントリー後に割引を適用してもらうことはできません。会員になるなら、申し込みボタンを押す前に済ませてください。順番を間違えると割引は消えます。

会費と割引額を天秤にかける計算も忘れずに。年1回しか受けないなら、会費のほうが上回ることもあります。

検定料以外にかかる「隠れコスト」5つ

ここが本題です。検定料だけで予算を組むと、ほぼ確実に足が出ます。

隠れコスト 中身
レターパック代 合格証などの発送用に、宛先を記入したレターパックライト(青)を自分で購入して持参する必要あり
交通費・宿泊費 会場と日程は固定。近隣で希望の級が開催されなければ遠征になる
教材費 課題曲の楽譜、楽典のワーク、聴音の問題集など。学科を受けるなら複数冊になる
再受験の費用 何度でも挑戦できる=落ちるたびに検定料が発生する
レッスン代 完全独学で学科まで仕上げるのは難易度が高い。スポットで指導を受ける前提で見積もると安全

特にレターパック。これは盲点です。

金額としては小さいのですが、当日忘れると合格証が受け取れません。実技と学科を同じ日に受けるなら1部で足ります。

コスパをどう考えるか

「検定料に見合う価値があるか」と聞かれたら、私はこう答えます。

級を買っていると思うなら、高い。半年間の学習計画を買っていると思うなら、安い。

家庭教師を半年つけることを考えてみてください。桁が変わります。

検定は、試験日というたった1つの締め切りで、半年分の家庭学習に背骨を入れる装置です。その効果を引き出せるかどうかは、結局のところ使い方次第。

予算を組むときは、検定料の1.5倍を見ておくと安心です。教材と交通費で思ったより膨らみます。それでも私が勧めるのは、この出費が「習慣」という形で残るからです。テキストを1冊買って終わるのとは、性質が違うんですよ。

最新の検定料・割引条件を公式サイトで確認

他の音楽検定・グレードとの違いを比較する

音楽系の検定やグレードは、意外と種類があります。

どれも目的が微妙に違うので、並べて整理しておきます。

名称 性格 学科・ソルフェージュ 向いている人
音楽技能検定
(日本音楽協会)
4科目を正面から実施。認定に必須 ヤマハ
グレード
歴史が長く認知度が高い。指導者資格にもつながる体系 即興演奏など独自科目の比重が大きい ヤマハ系の教室に通っている人
ピティナ
ピアノステップ
合否ではなくアドバイス重視の参加型ステージ 基本的に演奏中心 まず人前で弾く経験を積みたい人
カワイ
グレードテスト
カワイの教育システムに沿った段階評価 コースにより構成が異なる カワイ系の教室に通っている人
日本音楽能力検定
(音検)
全科目オンライン。楽器の種類が幅広い 知識中心。会場受験が不要 外出が難しい人、手軽に試したい人

表を見て気づいてほしいのは、「学科」の扱いに各社の思想が出ているという点です。

演奏の完成度に軸を置くもの。表現や経験に軸を置くもの。知識に軸を置くもの。

音楽技能検定は、その中で演奏と理論を同じ重さで扱う立ち位置。級の認定に実技と学科の両方を求めている時点で、方針がはっきりしています。

教室に通っていない子にとっての違い

ここは、ホームスクールのご家庭だけが直面する論点です。

ヤマハやカワイのグレードは、基本的にその教室の教育システムとセットになっています。通っていない子が単独で受けるという想定が、そもそも主流ではありません。

音楽技能検定は、この点で入口が広い。特定の教室に所属していなくても、誰でも申し込めます。

独学の子、家庭で教えている子、個人の先生についている子。どの立場でも同じ土俵に立てる。

この「所属を問わない」という設計は、地味ですが決定的です。

併用という選択もある

どれか一つに絞る必要はありません。

人前で弾く経験が足りないならステップ型の場を挟む。理論だけ先に固めたいならオンライン型を試す。そのうえで、総合力の確認として音楽技能検定を軸に据える。

組み合わせ方は自由です。ただし予算と本人の負担は、必ず先に見積もってください。

比較で迷ったときの判断基準をひとつ。お子さんが「楽譜を読むのが苦手」なら音楽技能検定を選んでください。逆に「人前で弾くのが怖い」段階なら、まずアドバイス型のステージで場数を踏ませるほうが順番として正しい。課題がどこにあるかで、選ぶ検定は変わります。

キャンセル・返金の条件はかなり厳しい

ここは申し込む前に必ず読んでほしい章です。

「とりあえず申し込んで、無理そうならやめればいい」という発想は、この検定では通用しません。

申込期間内でも手数料は差し引かれる

自己都合による取り消しの規定は、次のように定められています。

⚠️ 取り消し規定
  • 申込期間内/事務手数料3,800円と決済手数料330円、合計4,130円を差し引いた金額が返金
  • 申込締切後/返金なし

気づいてほしいのは、申込期間内であっても4,130円は戻ってこないという点です。

級によっては、検定料の大半がこの手数料で消える可能性もあります。

締切を過ぎたあとは、1円も戻りません。

「日程変更」という制度が存在しない

これも知っておくべき仕様です。

日程を変えたい場合、いったん現在の申し込みをキャンセルして、改めて希望日で新規に申し込む流れになります。

つまり日程変更=キャンセル扱い。当然、上の手数料が発生します。

キャンセルの手続きは、公式が用意しているキャンセルフォームから行います。

申込後に変更できるのは、連絡先と演奏曲目だけ

級・課題曲・受験会場を含む内容の変更、および取り消しと返金はできない。規約にはそう明記されています。

申込期間内に限って、連絡先と演奏曲目の変更だけは認められています。

逆に言えば、級と会場は申し込んだ時点で確定ということ。

「とりあえず上の級で出して、あとで下げよう」は不可能です。級選びは、申し込みボタンを押す前に終わらせてください。

失格・欠席・遅刻の扱い

当日のルールも厳格です。

⚠️ 失格になるケース
  • 受付時間内に受付を済ませていない
  • 事前登録と違う曲目を演奏した
  • 規定より多い、または少ない曲数を演奏した(登録曲が含まれていても失格)
  • 登録情報に偽りがあった
  • 試験の進行を著しく妨げた

いずれの場合も参加料の返金はありません。欠席の場合も同様です。

遅刻は原則として欠席扱い。運営が演奏順の変更を可能と判断した場合だけ受験できますが、その際は平均点から3点の減点対象になります。

3点は小さくありません。合格ラインが70点の級で、67点で落ちる可能性が生まれるということです。

天災や公共交通機関の大規模な運休といった、やむを得ない事態については都度対応が検討され、公式サイトで発表される形になっています。

当日の持ち物と会場のルール

忘れ物で泣かないために、ここも押さえておきます。

【当日の持ち物チェックリスト】
  • 受験票(試験日の10日前からマイページで確認できる)
  • 身分証明書
  • 宛先を記入したレターパックライト(青)
  • 上履きまたはスリッパ(会場による)
  • 補助台・足台・補助ペダルなど(必要な場合。実技)
  • 鉛筆などの筆記用具(学科)

会場内では、出場者も来場者も写真・動画の撮影が禁止です。

記念に一枚、も認められません。発覚した場合は撮影の中止とデータ削除、退出を求められます。

付き添いは最小人数で。中学生以下のお子さんの同伴者は1名までとされ、保護者控室の用意はありません。

服装は自由です。ここだけは気楽に構えてください。

厳しいと感じたかもしれません。ただ、この厳格さは公平性の裏返しでもあります。曲目も曲数も全員が同じ条件で審査される。だから合格に重みが出る。ゆるい検定の合格証は、本人もどこかで分かってしまうんですよ。

次の試験日に間に合う? 逆算シミュレーター

次の試験日に間に合う? 逆算シミュレーター

受ける級が決まったら、次はタイミングです。

申込期間は各試験日の30日前まで。ここを逃すと、次の期まで半年待つことになります。

いま申し込むべきか、次にするか。判断材料を出します。

TIMING CHECK
受験タイミング逆算シミュレーター
あと 12 週間
1日 1 時間
譜読みが終わったところ
Q4. 学科の対策は始めていますか

会場ごとに定員があり、達し次第で受付が止まります。

希望の会場が近くにあるなら、締切ぎりぎりを狙うのは危険です。

判定が「見送り」でも、落ち込まないでください。半年先に狙いを定めた瞬間から、家庭学習の質は変わります。期限のない練習と、期限のある練習はまったくの別物ですから。

よくある質問(FAQ)

Q. 教室に通っていない独学の子でも受けられますか?

受けられます。特定の教室への所属や、指導者の推薦は必要ありません。

アカウントを作って申し込めば、誰でも受験できます。

Q. いきなり上の級から受けてもいいですか?

問題ありません。実技・学科ともに、どの級でも自由に受験できます。

10級から順番に取る必要はありません。ただし飛ばした級の認定が後から付くわけではない点は理解しておいてください。

Q. 実技だけ受けて、学科は受けなくてもいいですか?

実技だけの受験は可能です。合格すれば実技の合格証も発行されます。

ただし「級の認定」は受けられません。認定には実技と学科の両方の合格が必要です(9級・10級を除く)。

Q. 実技と学科で、違う級を受けてもいいですか?

同じ期であれば、異なる級の実技と学科を受験できます。

演奏は得意だけれど楽譜は苦手、という子に向いた使い方です。ただし級の認定には、同じ級の実技と学科がそろう必要があります。

Q. 同じ日に複数の級を受けられますか?

同じ受験日・同じ会場で、異なる級を受けることはできません。1会場につき1つの級のみです。

Q. 学科の「本会場」と「準会場」は何が違いますか?

本会場では1〜8級の全科目を受験できます。

準会場で受けられるのは4〜8級の楽典と聴音、この2科目だけです。1〜3級や、視唱・リズム・初見視奏は準会場では受験できません。

3級以上を目指すなら、本会場へのアクセスを最初に確認してください。

Q. 暗譜は必須ですか?

1〜3級は暗譜での演奏が必要です。

4〜10級は楽譜を見ながら弾いて構いません。

Q. 繰り返し(リピート)はどう扱いますか?

リピート記号は原則としてすべて省略して演奏します。

ただしダ・カーポやダル・セーニョは、省略すると曲が終われないため、フィーネまで演奏します。1番カッコと2番カッコがある場合は、1番を飛ばして2番を弾いてください。

課題曲ごとに例外の指示が出ることもあります。申込前に該当曲の指示を必ず確認してください。

Q. 結果はいつわかりますか?

実技は試験日から10日後、学科は3週間後の17時に、マイページで確認できます。

合格証などの郵送は、結果発表からさらに1週間ほどかかります。

Q. 結果を学校に伝えてもらうことはできますか?

できます。公式サイトから連絡フォームをダウンロードして提出する形です。

在籍校との関係を保ちたいホームスクールのご家庭にとって、これは使える制度です。校外活動の実績として伝えられる材料になります。

Q. 支払い方法は何がありますか?

銀行振込とクレジット決済が使えます。

銀行振込の場合は、入金が確認された時点で申し込み完了です。振込を忘れたまま定員に達するケースがあるので、早めに済ませてください。

Q. 落ちたら、また同じ級を受けられますか?

受けられます。回数の制限はありません。

ただし受験のたびに検定料が発生します。

Q. 履歴書に書けますか?

公式は「音楽歴の一つとして履歴書に記載できる検定を目指す」という表現をとっています。文部科学省の後援認定については、視野に入れている段階です。

国家資格ではありません。あくまで民間検定として記載する形になります。

Q. ピアノ以外の楽器でも受けられますか?

ピアノのほかに、ヴァイオリンとフルートの部門があります。

部門によって会場数や日程が異なるので、公式サイトで該当部門のページをご確認ください。

Q. 発熱しているときはどうすればいいですか?

来場前に検温し、37.5度以上の発熱や咳などの症状がある場合は、来場を控えるよう求められています。

この場合も自己都合の欠席となり、返金はありません。

ここまで読んで「思ったより本格的だな」と感じた方。その感覚、正しいです。だからこそ、この検定で手にした級には意味がある。お子さんが半年後に賞状を手にしている姿を、一度想像してみてください。想像できたなら、あとは日程を押さえるだけです。

受ける級と、受ける時期。この2つが決まったら、次は会場と空き状況の確認です。

申込期間は各試験日の30日前まで。定員に達した会場から順に受付が閉じていきます。

上の診断結果を手元に置いたまま、公式の日程表を開いてみてください。

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※アカウント作成は無料。会場の空き状況もその場で確認できます

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